全日本選手権ロードレース
2009年6月28日 Web Staff

[上:ダブルエースの一人として連覇を狙って全日本に挑んだ野寺キャプテン]
[下:積極的な走りで攻撃を繰り返した鈴木真理選手だったが夢は叶わなかった]
photo(c):Yuzuru Sunada/www.yuzurusunada.com
6/28(日)に、[全日本選手権ロードレース]が開催されました。
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このレースに、シマノレーシングから以下の10名がエントリー。
野寺秀徳
狩野智也
鈴木真理
飯野嘉則
畑中勇介
村上純平
鈴木譲
島田真琴
阿部嵩之
阿部良之
土井雪広(スキル・シマノ)
※出走人数103名
日本一のロードレーサーを決める戦い「全日本選手権ロード」が開催されました。
日本人選手だけで、日本のコースで、派手な演出もなく、主催者が観客やメディアを積極的に呼び込むわけでないローカルな大会…
しかし、このレースを走るトップ選手たちの表情や気迫は、現地に脚を運べば嫌というほどに伝わってきます。
勝ったものだけが1年間着用を許される「全日本チャンピオンジャージ」の魔力なのかは分かりませんが、1年を通して最もステイタスの大会である事は間違いありません。
今回、シマノレーシングは、出場チーム中最多の10名でエントリー。
更に、スキル・シマノに所属して欧州のトップレースで活躍している土井選手が参加。
カタチ的には11名の大所帯でレースに挑むことになりました。
今年の「全日本」の目玉は、ツール出場を決めた日本の「ロード王子」新城選手。
テレビカメラを引き連れて動く様子は、ディスカバリーチャンネル時代に単独参加で全日本を制した別府選手を思い出させます。
エキップアサダ出身の新城選手ですが、今回はエキップアサダとは協力関係は持たず、独力でチャンピオンジャージを獲りに行くとレース前には噂されていました。
一方、ディフェンディングチャンピオンの野寺選手を抱え、直前のJサイクルツアーでは2連勝中(その前の熊野ではカザフスタン勢についで2位)のシマノレーシングは、成績、メンバーの質、人数的にももちろん優勝候補の最右翼。
しかし、事前のメディア報道などを見る限りはそれ程評価が高いわけでもなく、やはり海外で活動しているチームに注目のバイアスがかかっている事を感じます。
シマノレーシングと土井選手との関係は、明確な決め事はなく、グレーというか「お互いが利用し合える関係」というカタチでレースに挑むことになりました。
シマノレーシング全体の作戦としては、エースを鈴木真理&野寺、準エースを狩野&畑中とし、残りの選手達は状況に応じて優先順位の高い4名をサポートするという内容となります。
今期、既に多くのレースを高い目標を持って戦ってきた選手達への信頼感からか、ミーティングはどちらかというとシンプルで、選手の能力と判断に委ねる要素が多い状態で話し合いは終了しました。
そしてレース当日、選手達は一様に緊張感を漂わせていますが、どこかに自信から来る良い意味での余裕を感じます。
昨年の全日本は、五輪予選ということもあり、それはそれは重い空気に包まれていて、理想のレース内容を求めるという雰囲気は微塵もなく、キツイ言い方をすると「勝つためには手段は選ばない」といったまさに背水の陣的な空気が漂っていました。
しかし、今年は当然ながら勝つことを意識はしているものの、選手達の頭の中には勝つこと以外にもいくつかの興味があったのは間違いありません。
それは、「力を見せ付けて勝つ」、「TOJ以来の対決となるライバル、メイタンに力で勝つ」、「ツール出場で注目されている新城選手に力で挑んで勝つ」、etc。
昨年は「手段など選んでいられない、勝たないと大変なことになる」だったのですが…
もちろん、上記の内容がミーティングで話し合われたわけではないし、選手個々の口から聞いた言葉でもありません。
但し、今期の色々な出来事が、ポジティブな意味で選手たちの意識を変えていました。
そして、今年一番大きく変わった変化は、名称が「シマノレーシング」となり、同じ目的を持った一つのチームとしてチーム内の絆が強くなったことです。
選手達が昨年以上にチームにプライドを持つようになったことが、走り方、戦い方、そして勝ち方を意識させるようになったのでしょう。
さて、そんな変化を感じさせながらレースがはじまると、予想通りというか、予想外というか、各チームの動きがあまり活発ではありません。
逃げらしい逃げが決まらないまま数周が過ぎ、ようやくメイタンの菊池選手が飛び出します。
残りの距離も長く、しかも単独の逃げなので危機感はありませんが、シマノレーシングは鈴木譲選手などが前に出て集団のコントロールを開始します。
そして、一時、1分30秒以上まで開いていた菊池選手との差が30秒ほどに縮まったところで、畑中選手が単独で追撃に出て菊池選手と合流、先頭は2名となります。

[レース序盤から中盤にかけて良い働きをみせた畑中選手]
photo(c):Yuzuru Sunada/www.yuzurusunada.com
シマノとメイタンが先手を打ったことでライバルチームの動きが注目されましたが、意外にもいつもは積極的にレースを作るライバルチームまでもがまったくと言っていほど動きをみせません。
シマノレーシングとしては良い展開ですが、何か、他チームの消極さが逆に不気味に感じました。
レースはそのまま周回を重ね、先頭の2名とメイン集団との差は最大で3分30秒ほどまで開きますが、メイン集団をどこかのチームがコントロールするわけでもなく、集団の先頭付近にシマノとメイタンが陣取って灼熱のコース上で距離を消化していきます。
注目の新城選手や、同じく単独参加の宮澤選手なども、集団の後方でゆったりと周回を重ね、チームメイトがいない不利な状況を露呈することなく後半戦に向かっていきました。
ラップタイムは決して速くなく、前週に同コースで行われた西日本実業団ロード(2周少ない距離)よりも、ゴール時換算で約10分も遅いスローペースでレースは進んでいたことになります。
そして、そんな消耗戦の中でようやく動きが出たのが残り5周の最後の登り、先頭を走っていた菊池選手がアタックにでて畑中選手を振り切ります。
時を同じくして、メイン集団でもようやくアイサン勢が動き、先頭との差を順調に縮めはじめました。
近年、常に前に飛び出していく走りをみせていたアイサン勢が、この日はまるで別のチームの様に落ち着いた戦いをみせ、無駄な力を使わずにレースをコントロールしていきます。
そして、先頭から遅れた畑中選手が吸収されると、代わってシマノレーシングの島田選手がカウンターで飛び出します。

[畑中選手が先頭から脱落後、代わって飛び出した島田選手]
photo(c):Yuzuru Sunada/www.yuzurusunada.com
先手を打つ戦略の定石的走りで、シマノレーシングの若手がエース級の選手やチームメイトを見事にカバーしていきます。
しかし、ゴールが近づき集団のペースは上がり始め、残り3周をきったところで島田選手は吸収、更に菊池選手も吸収されたところで本命の新城選手がいよいよ攻撃を開始。

[本命の新城選手が満を持してアタックを開始]
photo:Hideaki.TAKAGI/www.cyclowired.jp
まずは、ジャブを打つように集団を細かく刻んでいきます。
そして、何度かのアタックで集団はバラバラになり、ラストラップに入ったところで9名の先頭グループが形成されました。
鈴木真理・野寺(シマノレーシング)
土井(スキル・シマノ)
新城(ブイグテレコム)
宮澤(アミーカチップス)
飯島(アンカー)
真鍋・佐野(ニッポ)
西谷(アイサン)

[最終局面で残った先頭の9名]
photo:Hideaki.TAKAGI/www.cyclowired.jp
細かいアタックが続いた後に、鈴木真理選手がゴールまで10km弱を残して単独アタック!
実はこの時点で野寺キャプテンは無線で不調を伝えており、鈴木真理選手のこのアタックは自らの勝利を狙っての本気アタックだったのです。

[ラスト周回に入るときに無線で不調を伝える野寺キャプテン]
photo(c):SHIMANO Racing
鈴木真理選手は小集団でのスプリントにはかなりの力を持っており、これまで彼の走り方から考えるとこの様な局面では無駄な力は使わず、野寺選手や土井選手とうまく協調して最後に備えるのが一般的な戦い方でした。
しかし、先週の西日本に続いて、この日の鈴木真理選手はある意味で彼らしくない勝ち方を選んで行動に出たのです。
ただ、考えてみると、TOJの大阪ステージ、熊野での第1ステージ、そしてこの日と、今期、鈴木真理選手がみせている走りは、国内選手の中でも際立って攻撃的です。

[独走での全日本制覇に向けて渾身のアタックを仕掛けた鈴木真理選手]
photo:Hideaki.TAKAGI/www.cyclowired.jp
鈴木真理選手が攻撃を開始したあと、集団はスローダウンし、その差は一時50秒近くまで開きます。
まさかこのまま逃げ切るか?
登りに入いると、やはりこの男が動きました。
新城選手が追撃をはじめて、ほぼ単独で鈴木真理選手を追います。
新城選手のスピードに付けずに、真鍋・宮澤選手が脱落。

[実力者二人の意地のぶつかり合い]
photo:Hideaki.TAKAGI/www.cyclowired.jp
約10〜15秒の差で最後の登りに突入し、他の5名を引き連れたままとうとう鈴木真理選手を吸収しました。
下りに入って遅れていた宮澤選手が先頭に復帰して先頭は7名。
ラスト1キロで鈴木真理選手が再びアタック、今度は飯島選手が他の選手を引き連れてこれを吸収。
そして、先頭は7名のままラストスプリントに突入します。
一番最初に仕掛けたのは、またもや鈴木真理選手。
まるで昨年の全日本での西谷選手の様な走りを繰り返します。
しかし、向かい風のホームストレートでスピードは伸びず、宮澤選手にかわされると、逆サイドから西谷選手が上がってきます。

[スプリントでも先行策にでた鈴木真理選手]
photo:Hideaki.TAKAGI/www.cyclowired.jp
200kmを戦ってきた各選手達は相当消耗しているようで、いつもの様なスピード感はない、まさにサバイバルスプリントでゴールに向かってきます。
本場のトップレースでも高いスプリント力を発揮する新城選手は完全に失速。鈴木真理選手の追走で脚を使ってしまったのは否めません。
そして、残ったのは、西谷選手と宮澤選手の二人!
ゴールラインを超えて、雄叫びを上げたのは、実力は日本一と言われながら、なかなかビッグレースでのタイトルに恵まれていなかったアイサンの西谷選手でした。

[アイサンの西谷選手が念願のタイトルを獲り感情が爆発する]
photo:Hideaki.TAKAGI/www.cyclowired.jp
2位に、今シーズン地獄を味わった宮澤選手、
3位に、7年連続の表彰台を実現した野寺キャプテンが入りました。
注目の新城選手は4位、鈴木真理選手は5位。
直前の帰国ながら高い実力の片鱗をみせた土井選手が6位となりました。

[2009年全日本選手権ロードの表彰台]
photo(c):Yuzuru Sunada/www.yuzurusunada.com
「今年の全日本選手権は面白かった。」
そう口にするファンや関係者の方々が多かったのが印象的でした。
きっと、それは昨年のレースと比較しているのかもしれません。
しかし、昨年のレースにはとても大きなドラマを感じましたし、何よりも、シマノレーシングの内部からみたこの2つのレースは異常なまでに対照的な内容で、全日本選手権というレースの奥深さを改めて思いしらされた気がします。

[表彰式でみせた鈴木真理選手の表情から全日本の重さが伝わってくる]
photo(c):SHIMANO Racing
今年の全日本選手権ロードでには、五輪予選だった昨年よりも、更に多くのお客さんが会場に集まっていました。
選手達が本気で戦うレースであれば、花形の外人選手がいなくても、派手な演出がなくても、十分以上に胸を打たれる何かを感じることができます。
レース後は、勝った選手やチームがやはり一番輝いていますが、全日本選手権ロードは、戦った全ての選手に様々な輝きを見つけることのできる数少ないレースなのかもしれません。
◆エリート[リザルト]
[全日本選手権ロード - 広島中央森林公園 - エリート - 196km ]
1位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)5h22'42"
2位 宮沢崇史(アミーカチップス・クナウフ)
3位 野寺秀徳(シマノレーシング)
4位 新城幸也(Bboxブイグテレコム)
5位 鈴木真理(シマノレーシング)
6位 土井雪広(スキル・シマノ)+02"
7位 飯島誠(チームブリヂストン・アンカー)+04"
8位 真鍋和幸(TEAM NIPPO COLNAGO)+18"
9位 佐野淳哉(TEAM NIPPO COLNAGO)+55"
10位 小森亮平(TREK LIVESTRONG U23 TEAM)+1'02"
11位 伊勢直人(TEAM MASSA FOCUS OUTDOOR PRODUCTS)+1'14"
12位 普久原奨(チームブリヂストン・アンカー)+1'52"
13位 平塚吉光(パールイズミスミタラバネロ)+2'00"
14位 廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)+2'05"
15位 広瀬敏(TEAM NIPPO COLNAGO)+3'03"
16位 伊丹健治(チームブリヂストン・アンカー)+3'07"
17位 早川朋宏(法政大学)+3'21"
18位 中島康晴(EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン)+6'04"
19位 清水良行(宇都宮ブリッツェン)+7'06"
20位 辻善光(マトリックス・パワータグ)+8'19"
22位 狩野智也(シマノレーシング)+9'16"
25位 村上純平(シマノレーシング)+9'17"
27位 鈴木譲(シマノレーシング)




















